AI Dispatch #37へようこそ。執筆は@ schizoxbtです ✍️

今週は市場全体の定例アップデートを割愛し、今年最注目テーマとなり得る「ロボティクス」についてご紹介します。

はじめに

2000年代初頭、Ray Kurzweil氏が技術進化の加速度的変化を指摘しました。

彼は技術進歩の加速に着目し、ひとつの発明が次の発展を生み、その成果が時間とともに指数関数的に拡大すると分析しました。例えば、火の発見が金属加工技術を生み、機械の開発、コンピュータの誕生、半導体高度化、AI進化へと連鎖しています。

こうした技術革新の連鎖は加速し、フィードバックループによって人類は常に新たなフロンティアへ進んできました。より高度なツールが研究を加速し、さらに優れたツールの登場を促し、次のサイクルが加速されるという流れです。

これが、現在の状況へとつながっています。

わずかな期間で、進化するAI、自動運転、暗号資産によるインターネットマネー、そしてロボットという未来に突入しました。

ロボティクスによる新時代では、ヒューマノイド型アンドロイドが様々な労働を担い、労働市場の急成長が予想されています。ロボットは休憩も休暇も不要、人間よりも圧倒的低コストで運用できます。

企業は、人件費より安価に倉庫いっぱいのロボットを導入可能であり、これは大きな事業転換点となります。

この流れの中で、暗号資産はどのように関与するのでしょうか。暗号資産は金融・コーディネーション・インフラという3層にまたがり統合が可能です。次章では、ロボティクス技術スタックとCrypto x Robotics注目プロジェクトを詳しく解説します。

ロボティクス技術スタックの3レイヤー解析

暗号資産がロボティクススタックへ統合される流れは以下の通りです：

1. 金融レイヤー

• 暗号資産は新たな金融インフラを提供し、ロボットが信頼不要かつプログラム可能な形で収益や支払いを実現します。
• ロボットは暗号ウォレットを持ち、従来型決済システムでは不可能なマイクロペイメントの受送信が可能です。数十億規模のロボット同士が自律的に相互作用する将来、ブロックチェーンはこのレベルのやり取りを支えられます。
• DAOはトークン化を通じてロボットやロボット群の部分的所有権の資金調達が可能となり、投資家向けの新たな投資モデルを創出します。

2. コーディネーションレイヤー

• ロボットネットワークの効率的運用には、タスク割り当て・作業検証・インセンティブ調整などを担うコーディネーションが不可欠です。
• スマートコントラクトが調整ロジックとなり、業務・支払い・確認をすべてブロックチェーンで実行・検証できます。
• ガバナンスはロボット群のアップグレード、配備エリア、価格決定などに活用され、トークン保有者の投票や自動化された意思決定で運用可能です。

3. インフラレイヤー

• ロボットには位置情報システム、地図、通信ネットワーク、IDシステム、計算能力などの共通基盤が必要です。ロボットが社会で主要な役割を担うには、人間社会向けに設計された世界をナビゲートする地図、自身の位置把握、相互通信・識別能力が不可欠です。暗号資産はGoogle CloudやAWSなど従来型インフラに頼らず、オープンかつ分散型の形でこれを実現します。
• ロボットはセンチメートル単位の正確な位置特定が必須で、RTK（Real-Time Kinematic）がGPSを用いてその精度を提供します。自律移動やナビゲーションに不可欠なデータです。
• 各ロボットは暗号ウォレットを持つことで、ID証明やテレメトリ署名、PoWデータ検証、オンチェーンレピュテーション構築が可能となります。

暗号資産とロボティクスの統合方法を解説したところで、実際のCrypto x Robotics注目プロジェクトを見ていきます。

peaq - @ peaq

peaqは、現在Crypto市場で時価総額最大のロボティクストークンとして広く知られています。

peaqはMachine Economyの基盤となるL1で、機械・ロボット・デバイスをファーストクラス市民として扱います。陸・空・海・宇宙問わず、あらゆる機体向けアプリ開発が可能です。

peaq上でアプリを開発すると、機械が自律的な経済主体となり収益獲得・協調・自己アップグレードが可能に。開発者は機械経済全体へアクセスできます。

これらの機械はネイティブなオンチェーン参加者となり、peaqはすでに3,000,000台以上の機械をオンチェーン化済み。今後も増加が見込まれます。

最近数か月でpeaqが発表した主な内容：

1. ロボティクスSDK公開。自律型IDを持つ機械が簡単にオンチェーン化され、ロボットが支払い・受取・データ検証可能に。
2. 世界初のトークン化ロボファームローンチ。地域コミュニティに野菜を供給。
3. 初めて自律型IDを取得したロボットの登場。

peaqは多様なプラグ＆プレイモジュールも提供し、チームはコアインフラを再構築せずに済みます。これはpeaqがロボティクスインフラストラクチャ・アズ・ア・サービスへ進化する重要な要素です。開発者はインフラ構築を省略し、すぐに自社プロダクトをローンチ可能です。

peaqは機械の金融・コーディネーション・ID層としてポジショニングしており、業界リーダーとして確立される可能性が高まっています。

これらの層はCrypto x Roboticsのクロスオーバーに不可欠で、機械の需要拡大に合わせて経済圏をスケールさせつつ、システムをゼロから作る必要なく展開可能です。ロボット市場が拡大すれば、数百万台規模の自律型ロボットが大規模に取引・相互作用する世界が現実となります。

$PEAQは現在時価総額約125,000,000ドル、価格は執筆時点で約0.09ドル。今後peaqのSDK活用プロジェクトが増え、機械経済が拡大するほど、Crypto x Robotics分野の成長余地も広がります。

Auki - @ AukiNetwork

ロボットは人間が作った世界を認識し、ナビゲートする必要があり、高度な空間認識処理が不可欠です。曲がり角や歩道、横断歩道のタイミングなど、私たちが普段意識しない多くの要素を把握しなければなりません。

Aukiは「posemesh」と呼ばれる分散型機械認識ネットワークおよび協調型空間コンピューティングプロトコルを開発しています。デジタルデバイスが空間データや計算能力を安全かつプライバシーを保ちつつ交換し、物理世界の共通理解を形成できる仕組みです。

これにより、物理世界をロボットが検索・閲覧・ナビゲート可能な空間に進化させ、Aukiは機械向け分散型神経系ネットワークを目指しています。

posemesh上では、デバイスがセンサーデータ、計算、ストレージなどのサービスをリクエスト・提供可能です。多様なアプリ・レイヤー・データセットが集まり、Aukiは様々な機械プロファイルがネットワークに貢献・価値享受できる設計です。

$AUKIは現在時価総額約78,000,000ドル、価格は執筆時点で約0.02ドル。中国最大級のロボティクス企業との独占交渉や、航空会社へのARナビ技術統合の話題が、今後の成長の起爆剤となります。

Geodnet - @ geodnet_

本レポートでも触れたRTKについて改めて解説します。RTKはリアルタイムキネマティックの略称で、通常のGPS/GNSSをベースにした高精度測位技術です。センチメートル単位の位置精度を実現し、ロボット、ドローン、自動運転車、空間知能ネットワーク等に必要なインフラです。

このインフラで、機械は物理世界で正確にナビゲート・マップ・協調できます。RTKがなければ位置は数メートル単位でズレ、自律移動・精密作業・オンチェーンデータ検証が困難です。

通常はGNSS基地局とローバーで構成されます。

ローバーはロボット・ドローンで、GNSS信号を受信し自身の位置を推定、基地局から補正データを受け取りリアルタイムでセンチメートル精度に修正します。

Geodnetは分散型RTKネットワークで、基地局運営者に独自トークンでインセンティブを提供しています。最大規模のRTK補正プロバイダーとして、主流GNSS業界でも高い評価を受けています。

$GEODは現在時価総額約42,000,000ドル、価格は執筆時点で約0.13ドル。最近ハンドヘルド型GNSS RTK受信機の予約販売開始が発表され、今後の成長の契機となる可能性があります。

CodecFlow - @ codecopenflow

CodecFlowはSolanaベースのプロジェクトで、ロボット＆AIエージェントの実行レイヤーを目指します。AIエージェントにフィジカルな存在と行動能力を与え、現実世界で物理タスクを大規模に実行できるようにします。

そのためにCodecではVision-Language-Action（VLA）モデルを導入しています。

このモデルによりエージェントは：

1. カメラや画面キャプチャで環境を認識
2. AIモデルで状況を理解
3. ソフトウェアや物理モデルを通じて行動を実行

Codecスタックは「Fabric」と「Operator Kit（OPTR）」の2コア構成です。

Fabricは計算能力を最適にルーティングするスマートな統合層で、クラウドプロバイダー間でワークロードをスケジューリングし、最も安価なGPU/計算リソースに割り当てます。

これによりロボットエージェント群を最適コストのクラウドに割り振れ、高額な選択肢に縛られず運用可能です。

CodecのOperator Kitはエージェント開発用デベロッパーキットで、認知・判断・行動できるエージェント構築、ワークフロー標準化、堅牢性・スケーラビリティ向上を可能にします。

$CODECは現在時価総額約13,000,000ドル、価格は執筆時点で約0.018ドル。Operator Toolkitの8月ローンチとpeaqのMachineDex統合で、Codecはロボティクス分野の注目度を高めています。

Silencio - @ silencionetwork

音は周囲世界の情報を想像以上に与えてくれる感覚です。車のクラクション、警察のサイレン、赤ちゃんの泣き声などは重要な情報源です。

人間が日常音を理解するには長い学習が必要ですが、ロボットに聴覚的手がかりを理解させるのは容易ではありません。自律型配達ロボットは、緊急車両のサイレン識別などが不可欠です。

Silencioは聴覚レイヤーを構築し、スマホやセンサーを持つ全員がノードになれる仕組みです。十分な音声データが集まれば、ロボットは環境認識と必要な音声知覚を獲得可能です。

Silencioは180か国以上で日次アクティブノード、1,300年以上分の音声データ、100万超の投稿者によるデータアップロードを達成しています。

$SLCは現在時価総額約6,000,000ドル、価格は執筆時点で約0.0002ドル。昨年9月の基調講演ではロボットの未来に音声データが不可欠であることが示され、今後も十分な優位性を維持できれば強い成長が見込まれます。

終わりか、始まりか？

本レポートはこれで締めくくりますが、ロボティクス時代の終わりでもCrypto x Roboticsの終焉でもありません。分野はまだ黎明期であり、今後も成長を続けます。

現状、株式市場のロボティクス時価総額は約112,000,000,000ドル、Crypto x Roboticsは約404,000,000ドルと伸びしろは十分です。

取り上げきれなかったプロジェクトや語り尽くせない可能性が多数あり、テーマは非常に広範かつ日々急速に拡大しています。Kurzweil氏が示した通り、未来に進むほど指数関数的な成長が期待されます。

近い将来、ヒューマノイドロボットが家庭で雑用をこなし、自動運転車が街中を走るのが当たり前になるでしょう。

今後ますます予測不能な展開が続くはずです。

本記事は分野の完全な総括ではなく、常に進化し続けています。もし取り上げ漏れや注目情報があればぜひご一報ください。

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Schizoより！

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